『さくら、もゆ。-as the Night's, Reincarnation-』感想
『さくら、もゆ。-as the Night's, Reincarnation-』クリアしました。僕にとって特別な作品の一つになりました。リアルが辛い人にはぜひプレイしてもらいたいです。
以下ネタバレ。
この作品では、たくさんの人たちの"想い"が描かれています。それは家族としての愛であったり、親としての愛であったり、恋愛であったり。愛し、愛されることがどれだけ素晴らしいか、ということを感じました。
『君たちのことが大切だからだ』
『……君たちのことが、大好きだからだ』
『そんな君らが何か、今、大きな苦しみの中にあるのなら、どんな犠牲を払ってでも応援したいと願うし、全力で、惜しみなく、力を貸したいと思うんだよ』
『"がんばれ。もう少しだ。負けるなよ。でも。ちゃんと休めよ、お願いだから。意地悪で、身勝手で、苦しんでる者の心を知ろうともしない。そんな誰かの言葉に飲まれちゃだめだよ"』
『……そんなふうに、いつも君に語り掛けている見えない"想い"が、いつだって、誰にだって、側にあるんだと信じてる』
『だから、この世界に生まれた"命"は、みんな……』
『みんな。それがどんなに不可能に思えることであっても、それが君に必要であると思うなら、いつか必ず乗り越えられるし、どんな"夢"でも叶えることができるだろう』
ああ、そうだ、何度だって言うぞ、とあさひは笑う。
『……だって、ほら。君の"隣"には、君のことを大切に想うたくさんの人の、たくさんの"想い"が、いつも君のことを助けられる瞬間を夢見て、寄り添っているんだから』
『たとえその姿が見えなくたって。応援の声が聞こえなくたって。繋いだ手と手に、触れられなくたって。それは、事実だ』
あさひさんの大雅とクロに対するこの"想い"に、この作品における"愛"は詰まっていると思います。
大切だから、大好きだから、幸せになってほしい、そんな純粋な"想い"。それはあさひさんだけではなく、あらゆるキャラクターたちが持っているものでした。そんなたくさんの"想い"で溢れているこの物語は、ただただ美しいものでした。
副題にもあるように、Reincarnation=輪廻もまた、この作品の重要な要素の一つとなっています。ここでの「輪廻」は、生命の輪廻はもちろんのこと、"想い"の輪廻でもあるのだろう、と思いました。
智仁の「さくら、もゆ」は、後に困難に立ち向かうことになる多くの人たちに"想い"を伝えるものとなっています。
「"さくら、もゆ"」
「これは"恋"の歌だ」
「……生涯たった一人を愛すると誓う、"愛"と"勇気"の歌なんだ」
「そして、この歌を聴いた人たちにとって、その人生にとって、ほんの少しでいいんだ。夜の中でも花咲くような"希望"であってほしいと、俺は、思ってる――」
大雅の「あなたの人生のための物語」もまた、「さくら、もゆ」のようにたくさんの"想い"を生み出すのだと思います。
「……"あなたの人生のための物語"」
それがぼくのあたらしい"夢"の名前だ、と大雅は言う。
「……もし、いつか、誰かがあのノートのページを、ひらくときがあったなら。その"誰か"の悲しみが、少しでも晴れるような――勇気に、なるような」
「……そこにある言葉の多くが、まるで自分のことを励ましてると、感じられるような……その人たちの側に、寄り添えるような……そんなもので、あったらいい。そう願っていたんだ」
そうであるならば、たくさんの"想い"を描いたこの作品、すなわち『さくら、もゆ。』もまた、僕たちプレイヤーに"想い"を伝えるものとなるのではないでしょうか。なにか困難に直面しているとき、辛いとき、寂しいとき、『さくら、もゆ。』のたくさんの"想い"に触れることで、希望に、"勇気"になるのではないかと思いました。少なくとも僕は、たくさんの"想い"に心打たれました。
「ヒーローは……」
「真の偉大さは、虐げられながらも何とか立ち上がり、懸命に生きようとする者たちの日常にこそあるものだと、信じてる」
「俺たちの心はいつも、いつでも、さみしさや悲しみに病んでいるけれど。いつまでも開けない"夜"の暗闇に、いつだって、負けそうになってしまうけど……」
「物語の中で戦うヒーローも、大勢の心を感動で震わせる創作者も。……所詮は悲しみの代弁者でしかないんだ」
「"夜"より暗い明けることのない日常を、苦しみ、悲しみ、それでも生きる……そんな大勢の名もなき者たちがいなければ」
「ヒーローも。創作者も。彼らは戦うことも、一遍の"歌"さえ残すこともできないんだよ」
「真に尊いものは誰にも知られず、誰にも見つけてもらえず……それでも悲しみや苦しみをじっと静かに見つめ続けるものの中にこそあるものだ」
「誰の目にも留まらぬ名もなき者たちの名もなき闘争にこそ、同じように苦しむ誰かのたゆまぬ一歩に繋がる勇気になるだろう」
「その一歩は、必ずこの世界を救う"希望"に変わると信じてる」
(中略)
「そういうふうに力なきものへ……、今を苦しむ名もなきもの達へと詠われた、誰かの"歌"と、君からもらった人生の中で俺は出会ったんだ」
「……遥か遠いいつかの時間の中で、たくさんの苦しみと悲しみを前に詠まれた"歌"が、俺の中に届いたんだよ」
原初の大雅が大雅に対して語ったように、日々頑張る人を応援するような、そんなメッセージがこの作品には込められていたんじゃないかと思います。
最後に、このCG。
蕾と花、そして葉桜が一つの枝にあるこのCG。これが生命の輪廻、あるいは"想い"の輪廻を表現していると思います。
すなわち、さくらは散ってしまうが、次の春にはまたさくらがもゆる、という生命の輪廻。
また、散って葉となってしまってもその葉が蕾に養分を与える。これは智仁の「さくら、もゆ」や大雅の「あなたの人生のための物語」、そして『さくら、もゆ。』が人々にたくさんの"想い"を伝える、まさに"想い"の輪廻であるようだ、と思いました。
これは完全に妄想ですけれど、そうであったらいいなぁと思います。
この作品は、たくさんの"想い"に溢れています。感動をうまく言葉にできないのがもどかしいですが、この作品に出会えたことを僕は本当に感謝しています。
「ありがとう。きみがこの世界に生まれてきてくれて、本当に、よかった」