『AQUA』感想
評価:Bランク★★★☆☆
自然あふれる島で、対照的な科学を扱った近未来SF。終盤受け入れがたいところがあったけど、大筋は面白かった。
- 凛√
離別エンド。終わりが近づいていることを自覚しながらも、精一杯過ごす日常はやっぱり尊い。颯太と別れるシーンもいいんだけど、お父さんとの別れのシーンも好き。
妻だけでなく二人の娘まで失ってしまうお父さんのことを考えるともうね……。最後まで一緒に過ごしたいだろうに、そこは颯太に譲るところが立派なお父さんすぎて。
ただ、プレイしてるときはあまり気にならなかったけど、後の√で凛と楓が生きているってわかるんだよね。粒子体が消えてもオリジナルは生きているわけで、凛たちはどうなったんだろうか。あと粒子体が消えた理由もいまいちわからない。ラケルの寿命が来ていたとしても、後日談でAQUAが無くなったみたいな話はなかったし。
- 奈々璃√
奈々璃ちゃかわいい。 事故のせいで成長がとまって、留年しちゃっていじめられて、両親はいないから働いて……というめちゃくちゃ不憫なヒロイン。こんなの護るしかない。そんなかわいそうな奈々璃にやっとできた友達も、千夏に操られた結果得たものだっていう現実が残酷すぎて辛かった……。
そういった辛いことがたくさんあった奈々璃だからこそ、ラストの感情をすべて吐き出して泣くシーンはいい。
辛いことがたくさんあって、それを乗り越えてハッピーエンドというまさに王道展開。ちゅき。
- 千紗√、LUKAS、AQUA
trueエンド。これまで謎だったことが徐々に明らかになっていくのはこういうゲームの面白いところだよね。千紗√で地味に好きなシーンは、ココロの死に触れることで死生観について考えるきっかけを得るところ。デジペットの流行によって死に触れる機会が少なくなったから、リアルペットのココロが死ぬことではじめて「なぜ死ぬと悲しいのか」という問いを得るということがとても印象深かった。
うーん、深い。(小並感)
LUKASではルカとアクアの成り立ちやEcREDの極悪非道さが説明されてた。タキオネーヴァーによって未来を確定させることができて、それが凛の予知能力の説明にもなるっていうところはまさにSFって感じで楽しかったなぁ。
ここまでよかったぶんAQUAにはかなり期待してたんだけど、どうしても結末が受け入れられなかった。一番はこれまで散々話に出てきたEcREDの上層部のアダム(個人か複数かも不明)が最後まで登場しなかったのがなぁ……。しかもEcREDは解体されないで再びAQUAの開発を進めるっていう。沙織や千夏たちを利用してきたEcREDが何のお咎めもなしっていうのが本当にモヤモヤした。たぶん科学の発展にはこれまで多くの犠牲を費やしてきたという事実が根本にあって、それを今もなお是としている現実に即しているんだろうけど、物語としてはやっぱりモヤモヤしちゃう。
あとは智恵と凛の心情について疑問が残った。沙織が智恵の妹で、EcREDのせいで亡くなっているというのにそれを悲しんだり憎んだりする描写がなかったのがなぁ。あと凛と楓は事故を装って拉致されて、そのためにお母さんが亡くなったというのがわかったのに、それに関する心理描写もなかった。普通泣いて怒ると思うんだけど。そこらの説明不足感はあったと思う。
ここまで散々文句言ったけど、千夏となずなが和解して千夏が消えるまでのシーンは好き。思い入れのあるひまわり畑をバックに、別れを惜しむ演出は感動した。
- 総評
SFの世界観で謎が明らかになっていく途中まではとてもよかった。ただ終盤がちょっと納得いかなかったのが残念。たぶん現代科学と命みたいなのがテーマとしてあったんだろうけど、うまく自分の中に落とし込むことができればもっと好きになれたと思う。